2024年3月15日に公開された『映画版 変な家』
公開当初から「なかなかひどいデキ」とSNSで話題になっていた作品で、そのネガティブな評判が逆に注目を集めたのか、最終的には興行収入が50億円を超える大ヒットを記録しました。
原作未読ですが、どんな作品なのか気になっていたので今回WOWOWで視聴。
ネタバレありの感想でも。
ストーリー
“雨男”の名前で活動するオカルト専門の動画クリエイター・雨宮は、マネージャーから引越し予定の一軒家の間取りが“変”だと相談を受ける。
そこで雨宮は、自身のオカルトネタの提供者であるミステリー愛好家の変人設計士・栗原に、この間取りの不可解な点について意見を聞いてみることに…。
次々と浮かび上がる奇妙な“違和感”に、栗原はある恐ろしい仮説を導き出す…。
そんな矢先、ある死体遺棄事件が世間を騒がせる。
その現場はなんとあの【変な家】のすぐ側だった。
事件と家との関連性を疑った雨宮は、一連の疑惑を動画にして投稿することに。
すると、動画を見た宮江柚希なる人物から、この家に心当たりがあるという連絡が入る。
柚希と合流したことで、さらに浮上する数々の謎。
そして新たな間取り図。
やがて二人は、事件の深部へと誘われていく―。
紐解かれていく間取りの謎の先に、浮かび上がる衝撃の真実とは―。
引用:Amazon prime video 映画版 変な家 より
感想
ストーリーは、オカルト系YouTuberの雨宮(間宮祥太朗)と、建築士・栗原(佐藤二朗)が不可解な間取りを調査し、そこから恐ろしい事実が浮かび上がる…というもの。
設定自体はめちゃくちゃ面白そうで、実際に導入部分は雰囲気もあり期待も膨らみましたが本当に最初だけでした...
ミステリー部分が雑すぎる
映画のメインテーマは「間取りに隠された秘密」でしたが、この謎解きがとても雑な扱いで違和感ばかり。
特に疑問に感じたのが、建築士の栗原の推理ですね。
間取りを見た瞬間に「これは殺人に使われた」となぜか断言。
普通なら「監禁部屋かもしれない」「何か別の目的があったのでは?」といった考察があってもいいはずですが、最初から「殺人」と決めつけてストーリーが進んでしまい、推理ではなくこじつけでは?と疑問しか浮かばず。
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片渕家の因縁ストーリーもブレブレ
映画の序盤こそ 「間取りの謎」 が中心に描かれますが、途中からストーリーの軸は 「片渕家の因縁」 にシフト。
しかし、この「片渕家の因縁」もブレているため、物語全体に疑問ばかりを感じてしまいました。
片渕家の血筋にまつわる事件なのに、直接血縁関係がない片渕慶太が犠牲になったり、村人たちが片渕家を助けるような行動をしたりと、他人ばかりが絡んできて血筋の呪いの話じゃなかったのか?と疑問ばかりが浮かぶストーリー展開。
血筋の因縁を巡るホラー作品にするなら、犠牲者も片渕家の直系に関わる人物であるべきだったのではないでしょうか?
例えば綾乃が犠牲になるなどすれば、もう少し 「片渕家が背負う運命」 に一貫性が出た気がします。
こうした因縁の描き方が中途半端だったせいで、「結局、何がしたい映画だったの?」というモヤモヤだけが残ってしまいました。
なぜホラーに寄せたのか?
『変な家』は原作では「不動産ミステリー」としてヒットしていましたが、映画版はほぼほぼホラー映画になっています。
その背景には、近年のホラー映画も影響していたんじゃないでしょうか。
事故物件を題材にした『事故物件 恐い間取り (2020年)』や清水崇監督による 「恐怖の村」シリーズ(『犬鳴村』『樹海村』『牛首村』)といった作品がヒット。
さらにYouTubeを中心にオカルト・怪談ブームが起きていたこともあり、「実在する場所や家にまつわるホラー」への関心が高まっていた流れから、『映画版 変な家』も「不動産×ホラー」の形に寄せたのかもしれません。
しかし、その結果、原作で支持されていた「間取りの不気味さを論理的に解き明かすミステリー要素」が薄れ、単なる「呪われた家系」的なホラーにシフトしてしまったことが本作の残念なポイントになった気がします。
最後に
ミステリーとして見ても考察の余地も少なく物足りないし、ホラーとして見てもそこまで怖くなくインパクトが弱かったですね。
ストーリーの軸もブレてしまっていてまとまりがない印象ですね。
「間取りミステリー」としても、「因縁ホラー」としても惜しい映画でした。