2016年公開のホラー映画『残穢 -住んではいけない部屋-』
以前、怪談番組でナナフシギのノヴさんや松嶋初音さんなど、霊が“見える”怪談師の方たちがこの作品について、「霊の描写が“見える人のそれ”によく似ている」と話していたのがずっと気になっていて、怖そうだなと思いながらも思い切って今回視聴してみました。
ストーリー
小説家である「私」のもとに、女子大生の久保さんという読者から、1通の手紙が届く。「今住んでいる部屋で、奇妙な"音"がするんです」好奇心を抑えられず、調査を開始する「私」と久保さん。すると、そのマンションの過去の住人たちが、引っ越し先で、自殺や心中、殺人など、数々の事件を引き起こしていた事実が浮かび上がる。彼らはなぜ、"音"のするその「部屋」ではなく、別々の「場所」で、不幸な末路をたどったのか。「私」と久保さんは、作家の平岡芳明、心霊マニアの青年・三澤徹夫、そして「私」の夫・直人らの協力を得て、ついに数十年の時を経た、壮大なる戦慄の真相に辿り着く。だがそれは、新たなる事件の序章に過ぎなかった-。すべての事件をつなぐ【穢れ】の正体とは?予定調和を許さない驚愕のラストまで、目が離せない。
引用:Amazon Prime Video 残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋― より
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感想
よくある、突然大きな音が鳴ったり何かが飛び出してきたりするようなホラーではなく、物語とシチュエーションでじわじわと怖がらせてくるタイプの作品でした。
演出は淡々としていて、ホラーというよりもどこかミステリーに近い印象。
ですが、物語が進むにつれてその土地にまつわる出来事が一つずつ明かされ、序盤に登場した断片的なエピソードが少しずつ繋がっていく展開はとても見応えがありました。
「そういうことやったんか!!」と気づいた瞬間の気持ちよさもよかったですね。
怖いながらも物語としても非常におもしろくて、あっという間に見終わってしまいました。
噂の黒い霊の描写
やっぱり気になったのが、黒い霊の描かれ方。
2次元のような、でもどこか3次元的でもある――そんな、なんとも言えない不思議な描写がされていて、「これが怪談師の方が言っていた“見える霊”の見え方なのかも」と思いながら、興味深く見ていました。
視覚的に不安定で、境界が曖昧だからこそ、“現実では見えないもの”としての怖さが増していたように感じます。
深まる不気味さと、這いまわる恐怖
土地にまつわる因縁が深掘りされるごとに、空気感がどんどん不穏になっていく感じも良かったです。
遡れば遡るほど、不気味さも増していく。
中でも印象的だったのが、床下を這いずり回るのが好きだった吉兼友三郎のシーン。
柱の陰からこちらをじっと見つめる彼の姿に、「焼け、殺せ…」というぼそぼそと繰り返されるセリフが重なり、背筋が凍るような怖さがありました。
クライマックスかと思いきや、恐怖は“これから”だった
元凶である北九州の奥山家の家にも辿り着き、物語が終わるのかと思いきやここからが本当の恐怖の連続でした。
エピローグで描かれるのは、関わった人々にじわじわと広がっていく“穢れ”の連鎖。
平岡芳明(佐々木蔵之介)の「話しても祟られる、聞いても祟られる」という言葉が、まさに今回の出来事を表していました。
- 飯田家の一家心中
- 引っ越し先でも「あの音」が聞こえると話す久保さん
- 屋嶋さんのホームビデオに映る複数の赤ちゃん
- 向かいの益子家で天井を見つめる子どもたち
- 「私」の家にかかってくる公衆電話からの着信
- 編集部で黒い影に襲われる河田さん
- 高野トシヱの首吊りを目撃する山本くんのシーンと、「あの音」でのラスト
直接的に関係していたわけじゃなく、ただ“関わっただけ”でも知らない間に取り憑かれていく――そんな恐怖の広がりが描かれていて怖すぎました。
ただ、「あの音」から始まっている物語なので「あの音」で終わらせたいのはわかるのですが、 「私」の自宅にかかってくる電話のシーンで終わった方が、個人的にはより余韻があって怖かったと思ってしまいますね。
そのあとに続く、編集部の河田さんが黒い影に襲われるシーン以降は、シーンごとがちょっと長く蛇足に感じてしまいました。
最後に
見える人たちが「リアルだ」と語る霊の描写が本当に興味深く、実際にそれがどんなふうに表現されているのかを体験できたことは貴重でした。
ストーリーがしっかりしていて、ミステリー的な面白さもありながら、じわじわと染み込んでくるような恐怖が魅力の作品です。
派手な怖さではなく、見終わったあとにふとした瞬間に思い出してゾッとする――そんな“静かな恐怖”を味わいたい方におすすめです。
霊感のある人が「リアル」と語るその描写が気になった方は、ぜひ一度観てみてください。