1995年7月1日に公開された松竹制作の映画『トイレの花子さん』
WOWOWのリクエスト企画「あなたの映画館 (2023年4月)」で放送されたのが初見でした。
同時期に公開されていた『学校の怪談』シリーズがドストライクだった世代ですが、公開時期やタイトルに引っ張られ、今作も「心霊ホラーかな?」と思いきや、蓋を開けてみると内容は全く別物。
人間の持つ暗い側面や集団心理の怖さを鋭く描いた作品でした。
なかなかに衝撃作だったのでネタバレありの感想を。
ストーリー
本町小学校の周辺で、小学生を狙った連続殺人事件が発生。
同校に通う拓也のクラスで、生徒たちは自分も襲われないかと不安になる。
そんな折、転校してきたばかりの美少女・冴子は人気者になったが、一転して殺人犯である幽霊“トイレの花子さん”だと噂されるように。
彼女をかばう拓也だったが、冴子が疑われるような事態が発生。
ある夜、拓は噂の真相を確かめようと深夜の校舎へ。
そこで冴子と出くわし、意外な事実を知るが……。
引用:Amazon Prime Video トイレの花子さん より
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感想
この映画、始めに言ってしまうと「トイレの花子さん」メインの心霊モノではなく、子どもたちのいじめとガチの変質者案件が引き起こすヒトコワホラー映画でした。
ストーリーは拓也とその妹のなつみ、拓也のクラスに転校してきた冴子を軸に進むのですが、なつみと冴子がそれぞれなかなかに酷いいじめを受けています。
集団心理の恐ろしさ
この映画が特筆すべき点は、いじめと集団心理が物語の中心に据えられていることですかね。
冴子が「花子さんが出ると言われるトイレ」に入っていただけで花子さん呼ばわりされたり、ヤギが殺された事件も疑われてしまったりと何でも起こったことを自分のせいにされる。
挙げ句の果てには民主主義だと偉そうに言い張り、クラス全員で冴子を朝までトイレに閉じ込めてしまい、否定しても耳を貸さないまさに魔女狩り状態...
元はといえば単に拓也のことが好きな加奈子が、転向してきた冴子に嫉妬して始まっただけなのに集団心理は残酷ですね。
子どもの頃感じたあの独特な嫌な感じがひぇ~って蘇ります。
緋田康人さんの怪演
後半に入ると、冴子が学校から出てこないので不審に思ったなつみが夜に1人で学校に侵入。
校舎に入った時についに変質者に遭遇するのですが、出るとわかってても姿が映った時はビックリしますね。
変質者役の緋田康人さんの演技が入りすぎてて、当時劇場で見た親も子どもは震え上がったんじゃないかと思います。
ガラス越しに姿を見せたり、カマで鏡を傷つけながらゆっくり近づいてくるシーンなんか怖すぎる。
花子さんの登場
そして、冴子がトイレで変質者に襲われていると、ついに花子さんが登場。
と言っても、怪奇現象を起こして笑い声くらいで姿はなしで、本当に一瞬でした。
どうもこの時に花子さんが本町小学校の生徒に「学校に集合」とテレパシーを送っていたらしく、テレパシーを受けた生徒たちがぞくぞくと校庭に集合。
その数に圧倒される変質者を捕まえて終わりなんですが、この集団に追い詰められる状況っていうのが、まさに今まで冴子に起こっていたことですね。
集団心理によって追い詰められることの恐怖だけでなく、良いふうに使えば助けにもなるっていうことでしょうか。
それにしても近隣の小学校で2件も殺人事件が起きていて、さらに生徒がいる校舎内でヤギが殺される事件まで発生してるのに、親も先生もめちゃめちゃのんきに色恋沙汰をしてるというツッコミどころ満載な状態。
しかも拓也が冴子のことを最後まで信じてるならまだしも個人的にはあんな酷いことされてラストキスシーンで終わるハッピーエンドはなんだかなって感じですね...
最後に
結局、怖いのはおばけではなく人間の集団心理ってことでしょうか。
トイレの花子さんが子どもの味方として描かれる珍しい作品ではあるんですが、『学校の怪談』シリーズが流行ってる中で、こんな変化球な映画はなかなか世間に受け入れられなかっただろうなと想像がつく作品でした。
ちなみに日本国内ではビデオとLDでしか発売されておらず配信もされていないので、現在なかなか見るのが難しい作品になっています。
【2024年8月19日追記】
全然気づかなかったんですがHulu、FOD、Amazon Prime Videoなど各配信サイトで見られるようになっています!
まさか配信されるとは思いも寄りませんでした。