2024年4月に公開された映画『陰陽師0』。
主演は山崎賢人、監督は佐藤嗣麻子。
野村萬斎が安倍晴明を演じた「陰陽師」シリーズ(2001年・2003年公開)が好きだった自分としては、発表当初から「なんで今さら陰陽師?」「タイトルも『呪術廻戦0』に引っ張られすぎでは?」と懐疑的でした。
正直、あまり興味は湧かなかったのですが試しに観てみると、意外にも楽しめました。
今回はWOWOWで視聴、ネタバレありの感想でも。
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感想
呪術=「思い込み」?斬新な設定
『陰陽師0』は、そのタイトル通り、安倍晴明が陰陽師になる前の物語。
呪術を学ぶ「陰陽寮」の生徒である晴明が、源博雅からの依頼をきっかけに怪異へと巻き込まれていくストーリーです。
特に印象的だったのは、呪術の扱い方。
本作では呪術のことを「呪(しゅ)」と呼び、その正体は 催眠術や認知の歪み、人の思い込みを利用した技 だと説明されます。
従来の陰陽師ものでは、呪術=魔法のような力として描かれることが多かったため、このリアル志向のアプローチは新鮮でした。
さらに、晴明自身が陰陽師の在り方に懐疑的なのも興味深いポイント。
彼は「陰陽師とは、起こりもしないことを起こると言って人を欺き、騙すもの」と言い切り、陰陽師という地位にも興味を持っていません。
このスタンスが物語の展開にどう影響するのかが、見どころの一つになっていました。
「精神世界」と「現実世界」を分ける演出
「呪術=思い込み」という設定がある以上、劇中の派手な呪術バトルをどう描くのかが気になるところ。
しかし、本作では大掛かりな呪術戦は主に精神世界で行われるという独自のルールを設定することで、この問題をクリアしています。
例えば、晴明と博雅が追われている最中、気づいたら広大な原っぱの中に立っているシーンがありました。
その風景があまりにも綺麗すぎてまるで絵画のように感じられたのですが、物語が進むにつれてこの場面が精神世界の出来事であると明かされます。
このように、現実と精神世界を巧みに分ける演出が随所に見られ、映像としても面白い仕掛けになっていました。
クライマックスの種明かしが秀逸
物語の終盤、陰陽頭だけに晴明が「本物」であることを明かすシーンがありました。
この演出により従来の「安倍晴明=天才陰陽師」というキャラクターの特別感を際立たせることに成功しています。
予告編の印象では「超能力バトルもの」かと思っていたのですが、実際はしっかりと設定に基づいた呪術描写になっており、意外にも理屈が通っていて納得感のある作品になっていました。
最後に
『陰陽師0』は、単なるリブート作品ではなく「陰陽師」という存在を改めて問い直す という新しい視点が加わった作品でした。
呪術のリアルな解釈、精神世界と現実世界を分ける演出、そして晴明のキャラクター造形など、思った以上に見どころが多く最後まで飽きずに楽しめました。
食わず嫌いせずに、興味がある人はぜひ一度観てみることをおすすめします。
- 2001年公開。安倍晴明は野村萬斎が、源博雅は伊藤英明が演じています。