先日、ムービープラスで1973年公開の映画『ウエストワールド』を初めて鑑賞しました。
この作品は、人工知能やテクノロジーの進化を背景に、テーマパーク内で起こる恐怖を描いたSF映画。
監督・脚本を手掛けたのは『ジュラシック・パーク』でも知られるマイケル・クライトン。
彼が描く「テーマパークで起きる制御不能のパニック」というテーマの作品を存分に体感できる一作でした。
ネタバレありの感想でも。
ストーリー
大砂漠の中の造られた最も贅沢なレジャーランド”デロス”。
そこには、多くの人々が豪勢なバカンスを過ごすために集まっていた。
弁護士マーティンもその一人。
前に来たことのある友人のブレインとともにバカンスを盛大に楽しもうとしていた。
しかし、デロス内では、徹底したサービスが売り物のロボットたちがお客たちへの反乱を開始し・・・。
引用:Amazon prime video ウエストワールド(字幕版) より
感想
物語の舞台となるのは「デロス」という最新技術を駆使した高級テーマパーク。
デロスでは、西部劇、ヨーロッパ中世、古代ローマを再現した3つの世界を、まるで現実かのように体験できます。
主人公のマーティンは、以前にもデロスに訪れたことがあるという友人ブレインに誘われてやってきました。
しかし、楽しいはずの休日は一変。
テーマパーク内のロボットたちが、次第に制御不能となり、ゲストに襲いかかるようになるのです。
ガンスリンガーの不気味さと後の作品への影響
「ウエストワールド」で繰り広げられる人間とロボットとの関係が物語の軸になります。
中でも特に印象的だったのはガンスリンガー (ユル・ブリンナー)というガンマンロボット。
冷酷で無感情な顔をしたガンスリンガーが、主人公マーティンを執拗に追いかけてくる姿は、まるで『ターミネーター』を思わせる無敵の追跡者の姿そのものでした。
また、松明の熱で体温が感知できなくなるシーンは『プレデター』を感じますし、巨大なテーマパークの中で、自分の体験したい世界が選べるのもまんま『ドラえもん のび太と銀河超特急』の設定そのもので、この作品が後の様々な作品に影響を与えていることに気づき、とても興味深く感じました。
環境に左右される人間の本質
映画を観ていて特に感じたのは、「人は置かれた環境によって大きく変わる」というテーマです。
普段は弁護士として法律を守って生きている主人公マーティンは、最初こそウエストワールドの世界に戸惑いを感じています。
酒場で喧嘩を売られた時も、現実世界の価値観から暴力を振るうことに躊躇していました。
しかし、一度ロボット相手に銃を撃ってしまうと、その行為に対する心理的な抵抗が次第に薄れていき、暴力を振るうことが彼の選択肢に組み込まれていく様子は、非常にリアルに描かれています。
この変化は、外部から隔絶された特殊な環境下では、人々が何を受け入れ、どのように変化していくのかを考えさせられます。
普段の倫理観や道徳心が、状況次第で簡単に揺らぎ、どこかで壊れてしまうかもしれないという危うさが感じられ考えさせられました。
ロボットと人間の境界の曖昧さ
さらに怖かったのは、ロボットと人間の区別が曖昧である点です。
外見から明確に見分けるには、手の平を見て確認するしか方法がなく、テーマパークの研究者でさえもロボットと人間の見分けがつかないという不安感が、観る側にも疑心暗鬼を抱かせていました。
ロボットと人間の境界線があいまいであることで、パーク内での出会いや出来事がすべて作り物のように感じられ、そのことが絶えず緊張感を生み出します。
「作り物の世界」を強調する舞台裏
さらに、このロボットのリアルさを際立たせる要素として、テーマパークの裏側で行われている「ロボットの修理と再利用」があります。
昼間は各世界で自由に行動するロボットたちも、壊れるとすぐに回収され、スタッフによって密かに修理されます。
この舞台裏の存在が、映画における「作り物の世界」を強く意識させ、パーク内で見えているものがどこまで現実で、どこからがフィクションなのかという疑問を突きつけてきます。
マイケル・クライトンが描く「制御不能」のテーマ
この映画の監督・脚本を手掛けたマイケル・クライトンは、後に『ジュラシック・パーク』でも同様に「テーマパークの暴走」を描いています。
『ウエストワールド』では、未来のテーマパークが舞台となり、ロボットたちが人間の娯楽のために完璧に制御されているはずでしたが、突如としてそのシステムが崩壊し暴走が始まります。
この「制御不能のパニック」は、『ジュラシック・パーク』でも恐竜が同様に制御を超えた存在として暴走します。
クライトンが一貫して描いているのは、最先端の技術や科学がもたらす希望と、その裏に潜む「人間の力を超えた恐怖」です。
『ウエストワールド』も『ジュラシック・パーク』も、テーマパークという閉ざされた空間を舞台に、観客に「人間が技術や自然をコントロールできるのか?」という根源的な問いを投げかけているように感じました。
最後に
映画『ウエストワールド』は、テクノロジーの進化に伴う恐怖と、人間の本質を問いかける深い作品でした。
マーティンがテーマパーク内で変化していく様子や、ロボットと人間の区別がつかなくなることへの不安感は、観る者に強い印象を残します。
そして、マイケル・クライトンが後の『ジュラシック・パーク』で描いた「テーマパークでのパニック」の原型が、この作品から垣間見えるのもおもしろいです。
時代を超えて影響を与え続けるこの名作、SF映画好きの方はぜひ一度ご覧になることをお勧めします。