仮面ライダーシリーズ生誕50周年記念作品の1つで、2023年3月18日に公開された『シン・仮面ライダー』
同じく庵野監督が関わる『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』とはまた異なる方向性で現代的にリブートされた作品で、興行収入的には少し厳しくなるんじゃないかなと個人的には感じてしまった今作。
遅ればせながら劇場に行ってきたのでネタバレありの感想でも。
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ストーリー
望まぬ力を背負わされ、人でなくなった男。
与えられた幸福論に、疑問を抱いた女。
SHOCKERの手によって高い殺傷能力を持つオーグメントと化した本郷猛(池松壮亮)は、組織から生まれるも反旗を翻した緑川ルリ子(浜辺美波)の導きで脱走。
迫りくる刺客たちとの壮絶な戦いに巻き込まれていく。
正義とは? 悪とは? 暴力の応酬に、終わりは来るのか。
力を得てもなお、“人”であろうとする本郷。
自由を得て、“心”を取り戻したルリ子。
運命を狂わされたふたりが選ぶ道は。
「シン・仮面ライダー」公式HPより
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感想
「庵野秀明セレクション仮面ライダー傑作選」が関西地方やTVerで2月から放送されていたので、それを事前に見ていたこともありますし、今作の仮面ライダーのデザインが旧1号に似ているのもあったため、暗めの怪奇テイストになるのかな〜なんて思っていました。
始まるやいなや血しぶきが飛びかい、やっぱりそっちだった!と納得。
これまでに見たかったまさに「大人向け仮面ライダー」と言えるものになっていました。
ただ『シン・ウルトラマン』と同様、複数のエピソードを繋げた展開でテンションが上がる場面も多くあるものの、全編を通して淡々と進んでいくので、一本の映画として見るとそこが繋がっていかず、盛り上がりに欠ける印象を受けたのが正直なところ(個人的には、クモオーグ戦でのライダーキックが一番テンション上がった)。
仮面ライダー第2号の一文字隼人は、ショッカーライダー戦や今作のラスボス仮面ライダー0号での頭突きで仮面を割るところも「力の2号」を感じさせる演出で良かったし、ストーリー上ギリギリ浮かないくらいのラインで面白いキャラに仕上がっていたので、作中一番魅力的に見えました。
原作漫画版とTV版のいいとこどり
『シン・仮面ライダー』では、石ノ森章太郎原作の漫画版の設定とキャラクターを活かしつつ、ビジュアルやアクションはTV版の良いところを取り入れているイメージでした。
映画を見ていてわかったところを上げていくとこんなところ。
- SHOCKERのメンバーが倒されると泡になって消える描写
→初期TV版仮面ライダーで見られるもので、倒された怪人はそれぞれ泡や液体・糸などになって消えていました。
- クモオーグとのダムでの対決
→石ノ森原作版とTV版共に一番初めの怪人は蜘蛛男、さらにTV版ではダムでの対決でした。
- 仮面ライダー第2号との対決で左足を負傷する仮面ライダー第1号
→本郷猛役の藤岡弘が撮影中にバイク事故により左大腿骨を骨折したため。
- 3種類の合成オーグメントの存在
→TV版ではゲルショッカーが2種類の生物を合成させた合体怪人。
ただTV版でカマキリ、カメレオンの合体怪人は登場しませんでした。
- 出てきたオーグの種類と順番
→今作の仮面ライダー第1号のデザイン通り、TV版で本郷猛が活躍する(旧1号デザインとして)13話までの怪人が順番通りに登場。
カマキリとカメレオンは一度倒された後に再生され、13話に再登場したのでKKオーグは蜂のあとに登場したと思われます。
1話:蜘蛛 → 2話:蝙蝠 → 3話:サソリ → 5話:カマキリ → 6−7話:カメレオン → 8話:蜂
- 強い力を得た苦悩
→TV版ではあまり描かれないが石ノ森原作版では一つのテーマでした。
- 仮面の下の変化した顔
→石ノ森原作版でも改造手術の影響で今作のように人間離れしたような顔に変化する要素でした。
- 敵として登場する仮面ライダー第2号
→石ノ森原作版の話にある「13人の仮面ライダー」でショッカーライダーの1人として一文字隼人が新聞記者を装ってルリ子と本郷猛に近づきます。
本郷猛の攻撃により頭部を負傷した一文字隼人は、ショッカーの洗脳から解除されました。
- 11体の大量発生型相変異バッタオーグ
→石ノ森原作版の話にある「13人の仮面ライダー」では「13が不吉な数字」なのにかけて本郷猛を葬るためにショッカーライダー12人+本郷猛が13人目で「13人の仮面ライダー」。
今作でも大量発生型相変異バッタオーグ11人+第1号+第2号で計13人となります。
- 本郷猛が亡くなり一文字隼人と一緒に戦っていく
→実際に石ノ森原作版の話にある「13人の仮面ライダー」では本郷猛はショッカーライダーに銃殺されてしまいます。
頭脳だけになるものの、自身の研究所でカプセルに入り一文字隼人と交信し、一緒にショッカーと戦っていく決意を固めます。
『シン・仮面ライダー』のラストシーンで2人が一緒になってからの一連のセリフも「13人の仮面ライダー」に由来しています。
- SHOCKERのボスを倒さない
→石ノ森原作版でもショッカーのボスの正体は不明のまま倒されずに終わっています。
以上のように、『シン・仮面ライダー』は石ノ森原作版の要素とTV版の要素をうまく組み合わせた作品となっていたと思います。
TV版を見たことがあっても石ノ森原作版を読んだことがない場合、本郷猛が死んでSHOCKERも倒されないラストにがっかりしてしまうかもしれない今作。
個人的には、「新2号デザイン」に変わるラストシーンの流れも石ノ森原作版とTV版のいいとこどりをしているようで、うまく解釈した落とし所やなーと感心しました。
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「仮面」ライダーであること
庵野さんもそう思ってたんか!と感じたのは、今作のオーグのデザインが蝙蝠の例外もあるなか基本は「仮面」を付けた改造人間であるというところ。
ショッカーの改造人間として登場する他の怪人は、元になった動植物のデフォルメしたデザインが特徴なのに、仮面ライダーだけが異質すぎて同じ改造人間として浮いてるのが気になっていました。
そのため、今回は仮面ライダー以外のオーグもフルフェイス型のマスクにデザインされていたのがすごい納得がありました!
TV版初期でそうであったように、各オーグの手下にも個性が出るようにデザインされていたり、オーグ自体も着ぐるみではなくボディスーツに近いデザインなのがまたよかったです。
お祭り騒ぎ
追加のキャスト発表以外には、ストーリーの情報もほとんど公開されず、劇場で観た時にはびっくりした出演者も多数でした。
「政府の男」が今回も登場するのかな?くらいには思っていたのですが、「情報機関の男」が登場した瞬間、思わず声が出てしまったし、さらにその名前が「タチバナ」と「タキ」であったり、サソリオーグの長澤まさみや、エンドロールで気付いた松坂桃李など、ゲストキャストもものすごい豪華で、まさに「シン」シリーズ集大成的な役者陣でした。
最後に
『シン・ウルトラマン』での飛行シーンなどの当時の模型を再現をしたようなコミカルな表現ではなく、リアルな再現にこだわり初期仮面ライダーの雰囲気や他の石ノ森作品の要素も多く取り入れ、徹底的に『仮面ライダー』をリブートした作品でした。
そのため、独特な個性がありますが個人的には楽しむことができた作品でした。