2023年11月3日に公開された『ゴジラ-1.0 (マイナスワン)』
ゴジラ生誕70周年記念作品*1となる今作は『シン・ゴジラ』以来7年ぶりの実写作品であり、実写ゴジラ映画として30作品目になります。
監督・脚本・VFXを務めるのは山崎貴、主演は神木隆之介、ヒロインは浜辺美波。
『シン・ゴジラ』で国内実写ゴジラへの期待値が高まっていたなかで、どんな作品が出てくるのかとヒヤヒヤしていましたが本作は十分その期待に応える作品になっていたんではないでしょうか。
初日に劇場へ行けたのでネタバレありの感想でも。
ストーリー
生きて、抗え。
焦土と化した日本に、突如現れたゴジラ。
残された名もなき人々に、生きて抗う術はあるのか。
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感想
ついに日本のゴジラもここまできたかー!っていうのがやっぱり今作一番の感想。
ストーリーの展開はベタなんですが人間パートはゴジラシリーズ屈指のでき+ゴジラの暴れる怪獣パートも最高でした。
見どころの一つである海上のシーンは特に印象的でしたね。
山崎監督は『アルキメデスの大戦』で海を描く経験を積んでおり、その自信から今回の制作に取り組んだそうです。
今作は一作目『ゴジラ (1954)』よりも前の時代設定で、第二次世界大戦末期の1945年から終戦直後の1947年が舞台に。
主人公 敷島浩一を通してゴジラに対する恐怖や戦争によって失ったものを取り戻そうとする姿が描かれているのですが、敷島がトラウマに背を向けるたびにゴジラが現れる。
ついに典子までゴジラの犠牲となってしまい、その圧倒的な力の前ではただただ叫ぶことしかできない敷島のシーンは、ゴジラへの怒りがよく表現されていたと思います。
ゴジラが敷島の前に現れるのはあくまで偶然ですが、あたかも本当に呪われているようにこれでもかと追い詰めて曇らせる展開は、戦争中にできなかったことを引きずる敷島の苦悩もまして良かったですね。
ストーリー後半では、いよいよゴジラ撃退に向けた「海神作戦 (わだつみさくせん)」の存在が明かされますが、明らかに『ゴジラ (1954)』の「オキシジェン・デストロイヤー」を彷彿とさせるものでテンションも上がる。
武装解除され武器も軍もない中で立ち向かわなければ行けない人間側とゴジラとの決着をどうつけるのかと思いましたが水圧で倒すという落とし所には感心しましたね。
その「海神作戦」も穴だらけの作戦だということをちゃんとストーリー中に突っ込ませているので、映画を見てるこちらも気にならずにすみました。
作戦会議の段階でゴジラがどうなるかの説明もされているため、実際にゴジラに対して作戦を実行した際に何が起きてるのかもよくわかりやすかったです。
ラストの典子が生きている展開はさすがにやりすぎとは思いましたが、首には怪しげな黒いアザのようなものが。
全て丸く収まったハッピーエンドのように描かれていますが、その裏では不穏に終わるところもゴジラ映画でよくあるパターンでファンにはおっと思わせるエンディングでした。
今作のゴジラは恐怖と絶望感が圧倒的
冒頭、大戸島にいきなり現れるゴジラはまだ島に伝わる生物「呉爾羅」の状態で、「ゴジラなんだろうけどゴジラじゃない」別の異様な生物感がよく出ていてかなり怖かったですね。
この時点ではまだ体長も15mほどと小柄で、攻撃されると噛みついて反撃する恐竜に近いような状態。
やっぱり映像的にはこれくらいのサイズのものに人間が襲われているのが絵的に恐怖を感じます。
次に海上で敷島の前に現れたときには、ビキニ環礁の核実験により放射能の影響を受け巨大化した「ゴジラ」の姿に。
「新生丸」を追うゴジラの姿は犬のようで愛嬌があるものの、爆破されても瞬時に再生するわ、「高雄」を熱線で一瞬にして木っ端微塵にするわで絶望感しかない。
ついに東京に上陸したゴジラはさらに圧倒的な力で蹂躙。
身長は歴代ゴジラの中では小柄な部類になりますが、かなりボリュームアップされたマッシブな巨体で暴れまわるため被害範囲もかなり広い。
従来のゴジラはだいたいは人間を狙うというよりも、通るルート上に人間がいるのがほとんどでしたが、今作は明確に人間を狙うのも怖いポイント。
また今作の熱線は着弾点が爆発するタイプになっていたので、爆風で建物は吹き飛び、キノコ雲が立ち込め黒い雨が降るなどさながら原子爆弾が落とされたよう。
ただCGをごまかすような夜間の映像が少ないのは良かったポイントですが、もう少し陸上で暴れまわるゴジラの姿が見たかったですね。
気になったところ
と、ここまで書いていると良い所も多いのですが、個人的には山崎監督の作品にはどうも乗れないところが...
- 佐々木蔵之介や安藤サクラの漫画みたいなキャラ
- 音楽の過剰な演出
- 熱線を吐くときの背びれバチンバチンギミック
- 最後の敬礼 など
今作で気になったのはこんなところで、キャラクターはまだ許せたんですが音楽の押し付けがましさがちょっと酷い。
暗いシーンになるとあまりにもお涙頂戴な圧があり、逆に引いてしまってあまり映像に入り込めない大きな原因でした。
最後の敬礼については下記のようにパンフレットの吉岡秀隆インタビューページに書いてあるものの、どうもやり過ぎ感が。
“神殺し”と感じる人もいて敬礼する人が出るっていうのはわかるんですが、ストーリー的にゴジラは過去の乗り越えなければいけない壁になってしまっているので、急に全員が敬って敬礼するのは疑問が残りますね。
とくに作中ではゴジラに対して憎悪は向けど神々しさを感じているキャラクターもいなかったので余計に。
監督は脚本の最後に“神殺し”と書いていたんです。ゴジラが光に包まれて神々しく内部崩壊していく姿に、思わずみんなが敬礼する。
ゴジラ-1.0 パンフレット 吉岡秀隆 インタビューページより
最後に
作品全体については気になるところはあるものの、人間パートも良く描かれていましたし、ゴジラが暴れまわるシーンや「海神作戦」の盛り上がりなど見どころもたくさんあり楽しめました。
『シン・ゴジラ』がヒットして以降は何かしら毎年公開され、どんどん広がるゴジラの世界に今後も期待が高まります。
*1:本来は2024年が70周年ですが、ハリウッド版ゴジラとの兼ね合いで2023年公開でも70周年作品に