2023年3月4日から配信が始まったHuluオリジナル『THE SWARM / ザ・スウォーム』
日本からは木村拓哉が海外ドラマ初出演!と話題になっていた作品で、フランク・シャッツィングによる小説『深海のYrr (しんかいのイール、原題: Der Schwarm)』を原作とした、海洋からの脅威に立ち向かう人々を描いたSFドラマです。
「映像化不可能」と言われた原作を映像化した今作、全話見たのでネタバレありの感想でも。
「THE SWARM/ザ・スウォーム」Hulu独占配信スタート! - YouTube
ストーリー
世界中の海で不可解な現象が次々と起きていた…
クジラやシャチが突如人間を襲い、ロブスターによる謎の感染症が蔓延ーそれらの出来事は全く関連性が無いと思われていた。
しかし、世界各国から集結した研究者たちは驚くべき結論に辿り着く。宇宙よりも謎が多いと言われる深海で一体何が起きているのか?
人類は再び平和な海を取り戻すことができるのか…!?Hulu「THE SWARM」公式ホームページ より
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感想
1〜3話あらすじ
南太平洋ペルーで漁師が多量の魚の群れに遭遇したことから、世界中で海に異変が起こり始めた。
ドイツのIMB(海洋生物研究所)で研究員をしているチャーリーは、通常は海底深くにあるはずのメタンハイドレートのかけらが大量に海面に浮き上がっていることを発見する。
同じくクジラを専門とする学者レオンも、クジラが異変を感じていることから海に出て調査を始める。
一方、フランスでは高級レストランのロブスターが謎の病気にかかり、それに触れた人々が次々と死亡する事件が発生。
ノルウェーでは新種のアイスワームが海中で急速に繁殖しており、これが環境汚染の原因とされる。
世界各地で異変が起こる中、海洋専門家たちは事件の背後に潜む謎を追い始める。
物語の序章
1〜3話はかなり丁寧に物語の設定や展開を詳しく説明していくので、見始めは少し退屈に思うかも。
物語の進行とともに世界各地で異変が起こるため、とにかく登場人物が多く場面転換も多いです。
3話までの主要人物とそれぞれの状況だけをまとめるとこんな感じ。
【カナダ】
- クジラ学者のレオン: クジラとシャチが凶暴化し、人を襲う事件の調査。
【スコットランド】
- ドイツIMB(海洋生物研究所)の研究員 チャーリー: 地下のメタンハイドレードの異変や、同僚が乗る調査船ジュノー号の沈没の調査。
【ノルウェー】
- シグル教授: 資源開発の環境調査中に、ノルウェー海で見つけた新種のアイスワームについて調査。
【フランス】
- 分子生物学者のセシル博士: レストランで発生した、ロブスターが原因と思われる食中毒の調査。
【スイス&東京】
- ミフネ財団: 新種のアイスワームの他地域の生息地を把握済みであり、太平洋で所有する船がクジラに襲撃される。
1話の最後でクジラに船を壊され続けざまにシャチに襲われたり、2話の冒頭でロブスターが怪しく映っていたかと思えば、ロブスターが媒介となり病原菌を広めたりと、まるで海が人間へ攻撃を行っているよう。
人間をじわじわ襲ってくるさまは、深海SFサスペンスというよりは海洋のモンスターパニックドラマに感じられるストーリーで、残りの配信も楽しみになりました。
今回のドラマ化では「ヨーロッパ制作のテレビシリーズ史上最大級の制作費で映像化」と謳われてるだけあって各地の美しい風景や町並み、リアルなCGなど映像は豪華です。
そして、日本で話題になっていた木村拓哉の出演ですが、いつ出てくるのかな〜と思って進めてると3話でやっと登場。
海外ドラマなのにセリフ全部が日本語という予想を超える形だったので、この後どうすんの!?とびっくりしましたね。
4〜5話あらすじ
新種のカニや突然変異した貝が世界中で発見され、海洋異変が起こっていることが明らかになる中、レオンは深海で発見した謎の生物とクジラの泣き声の正体を突き止めようとしていた。
一方、シグル教授はバクテリアの急増殖による危険性をレーマン教授と協議。
チャーリーはジュノー号のビデオから仮説を立てるが、保守的なレーマン教授は受け入れない。
ジェネーブでは海洋災害の関連性を議論するため国際海洋保護委員会が開催されていた。
繋がりだしたストーリー
ミフネ財団を中心に、世界各地で起こっている海洋異変が徐々に繋がり始めた4話〜5話でした。
少しづつ海底に潜む異様な光景に気が付きつつあるものの、まだまだ物語中盤。
ほんとに全8話で終われるのか不安になるペースで進んでます...
それにしても5話ラスト、シグル教授にあのメッセージを残していくティナがなかなかに酷い。
あれは一生の呪いになるよ...
6話あらすじ
シグル教授は科学者たちをドイツIMBに集めて、海洋異変が未知の知的生命体による攻撃である可能性を立てる。
この仮説に対してレーマン教授は激昂、チームから降りることを告げる。
シグル教授は“イール”と名付けた知的生命体について各国首脳に説明する。
天体物理学者サマンサも加わった科学者チームは、北極に“イール”がいる可能性があると予測、ミフネは協力を約束する。
各々家族との最後になるかもしれない団らんを終え、海洋調査へ向かう。
数週間内に起こった海洋異変は、すべて裏で繋がっていることが示唆され、物語はよりスリリングに展開していく。
YRR
それぞれ大事な人を失いながら、ついに大きく物語が動き出した6話。
シグル教授がシャーロック・ホームズの有名な言葉「全ての不可能を排除し、最後に残ったものがどんなに奇妙でも、それが真実となる」を引用しながら、常識では信じられない仮説を立て、これまでの海洋異変の原因となる存在について世界に公表しました。
シグル教授は、レオンのブレスレットに刻まれている「未知のもの」を表すマークを分解すると「Y・R・R」と読めることから、知的生命体を「イール (YRR)」と命名。
そして、1話で少しだけ登場していた天体物理学者サマンサは、イールの信号の発信場所を特定しました。
残すところ2話となりますが、どんな結末が待っているのでしょうか。
木村拓哉扮するアイト・ミフネも次回以降やっと本格的に参戦しそうな雰囲気です(ちなみにアイト・ミフネはもともと原作では出てこないドラマオリジナルキャラ)。
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7〜8話あらすじ
科学者チームとミフネ財団のスタッフは、研究船トヴァルセン号に乗り込みグリーンランド沖の北極海モロイ海淵へ向かう。
しかし、チャーリーが海底で目撃した発光する生き物、そして倒れたアリシアの神経系と何かが融合した形跡を発見したことから、船内にイールが潜入した可能性が高いことが判明。
シグル教授は交信が可能になったイールとの平和的な対話が最善策であると主張する。
一方、格納庫のプールでケタミン投入の検証をしたことでイールが暴れ、ルーサーが犠牲になる。
研究船は何者かに引きずられて氷河に挟まれ、絶体絶命の危機に追い込まれる中、チャーリーはルーサーを載せた潜水艇でイールと対峙するため海底へと向かった。
サマンサが有能過ぎる
6話後半から本格的にチームに参加したサマンサがとにかく有能過ぎる。
イールからのメッセージ発信場所の特定やイールへのメッセージの作成・解読を行うなど、サマンサ無しでどうやってイールとコミュニケーションをとるつもりでいたんですかシグル教授...
そして、ついに描かれたイールの正体も美しく神秘的に描かれていました。
決して敵対する相手としてではなくあくまでも超自然的な存在。
人間も自然の一部であり、自然を支配することなどできるはずもありません。
自然を支配しようとする考えは単なるおごりですね。
ミフネ財団
7〜8話にかけて急に登場回数が増えたミフネ財団のサラ。
レオンやチャーリーとの会話から傲慢さを感じさせるいやーなキャラでした。
一方、満を持して合流したアイト・ミフネは一体なにをしに船に来たんや感が。
序盤では変化が起こる海を守りたいと言い援助していたものの、8話の会話だけをみると海を支配したがってるようにしか見えず。
事態を悪化させるようなことしかしてないのに、自分はさっさとヘリコプターで帰っちゃうしで...
まあ何か企んでそうに見えて、序盤からシグル教授を援助し続けていたから言葉通りといえば言葉通りなんですが。
このプロデューサーのインタビュー記事の内容も含め、もう少しキャラの深彫もしてほしかったところ。
ミフネは海運業で富を築きましたが、同時に海へダメージを与えてしまったことも自覚していて、科学者たちを支援することが、自分自身が海に与えてしまったダメージを払拭する、そして世界を救うためのチャンスだと考えています
『ゲーム・オブ・スローンズ』プロデューサーが「本当のプロフェッショナルだ」と感心した、木村拓哉からの提案 | ORICON NEWS
海の底でナウシカ
7〜8話中ずっとチャーリー1人が自身の生い立ちやイールと直接接触するなど、フラグを立てながら物語が進んでいくので、最後の方はこうなるのではないかなと思いながら見てしまいました。
チャーリーが自らの身体を差し出し人間のことを理解してもらうことでイールの怒りを収めるなど、ラストの流れはさながら映画『風の谷のナウシカ』を思わせるものでした。
砂浜に戻ってきたチャーリーは、傷も治り、目の色も変化しているなど、イールと一体化したように思われますね。
最後に
なんとか8話で無事に終わったものの、最後は余韻もあまりないため少し物足りなさを感じました。
物語の序盤こそ海からの直接的な脅威が描かれ、海のヤバさが嫌と言うほど伝わっていましたが、後半になるにつれ室内や船内がメインの舞台になり、海からの脅威がほとんど描かれなくなってしまいました (南アフリカ沿岸の津波が壊滅的な出来事としてセリフとテレビから流れたくらい)。
そのため世界規模でのスケール感が最後まで伝わってこず、終盤に向けて物足りなさを感じましたね。
まあ海からの脅威が進行しすぎるとイールとの対話が成立しないんで、仕方がないとも思いますが...
とはいえ、メインのストーリーは非常に丁寧に作り込まれており、各話をじっくり楽しむことができる作品でした。
続編はいくらでも作れると思いますが、序盤から各話の間はあまり多くを語らず察してよな演出を見ていると続きはなさそうな気はしますね。
- 原作小説